今年は在伯愛媛県人会の創立60周年に当たり、海外協会は11月、ブラジル・サンパウロで開かれる記念式典に慶祝訪問団を派遣する。そこでブラジル日系社会について理解を深めるため、昨年7月、サンパウロを訪れ、第10回ブラジルよさこいソーラン大会でオープニング演奏を担当、日系社会で尺八の演奏指導をした岳人山さんの話を聞く機会を設けた。
尺八の演奏家、作曲家、指導者として世界を舞台に活動している岳人山さんは、「太陽が北に見える国・ブラジル」には古き良き時代の日本と日本人の心が残っていると力説。尺八の生演奏を交えながら、戦前まで日本にあった古来の音階について解説。「日系ブラジル人のすごいところは、日本の曲もブラジルの曲も、聴いて正しく評価できること。だからブラジルでは、平均律ではない、生きた音楽を聴くことができる」と評価した。
サンパウロの尺八人口は2千人、琴は8千人といわれ、岳人山さんは「日系人は高額な和楽器を日本から輸入し、日本の道徳や先人を敬う心を大切にしようと努めている」と説明。サトウキビが原材料の強い酒・ピンガや、想像を絶する大規模なイグアスの滝とイタイプダムを例示し、「ブラジルにはわれわれの固定観念の中に無いものがある」と日本とブラジルのスケールの違いも紹介した。
岳人山さんは坂本龍馬脱藩150年を記念して自作した曲をはじめ、日本の唱歌やサンバ曲など合計8曲を演奏。出席者らは間近で聴く、迫力満点の名演奏に感激、大きな拍手を送っていた。質疑応答では、北半球と南半球の違いが尺八演奏に及ぼす影響や楽器と湿度の関係、尺八の素材となる竹についてなどさまざまな質問が相次ぎ、地区会は大いに盛り上がった。
西条地区会も2月13日、岳人山さんを講師に迎え、同じ演題で開かれる。
【写真】㊤音楽を通してブラジル日系社会への理解を深めた宇和島地区会㊦尺八を演奏する岳人山さん