ポイントアリーナはサンフランシスコの北に位置する。1913(大正2)年5月、八幡浜市真穴地区から若者など15人が打瀬船(うたせぶね)と呼ばれる帆掛け船天神丸(全長約15メートル)で密かに出航し、北針(羅針盤)を頼りに太平洋を横断。58日に及ぶ決死の航海を経てポイントアリーナの海岸にたどり着いた。乗組員は密航者として拘束され、強制送還されたが、八幡浜市民は今も先人の精神を顕彰。1996年には歴史的な場所である現地に記念碑「北針の碑」を建立した。
ポイントアリーナを訪問したのは、サンフランシスコ近くに住む矢野ジョージさん(71)=八幡浜市出身の帰米3世=と菊池ヘンリーさん(84)=同市出身の帰米2世=をはじめ、矢野さんの妹・井上ベスさん夫妻の4人。8月18日、車で4時間半かけて訪れた。ポイントアリーナのバーキー市長と助役、職員、市議会議員、天神丸の乗組員が漂着時に世話になった先住民・ポモ族の子孫ら計約30人が記念碑前に参列。矢野さんが神官役を務め、天神丸100周年を顕彰する記念式を行った。式の後、出席者らは清酒とワイン、炭酸飲料、ケーキとクッキーで歓談、親交を深めた。
ポイントアリーナでは2010年8月、ロサンゼルスで行われた南加愛媛県人会創立100周年記念式典に出席した加戸守行知事(当時)ら慶祝訪問団が訪れて記念植樹した。市街地の中心部に植えられた記念樹は元気に育っているという。
矢野さんは「ポイントアリーナは小さい町だが、天神丸の史実があることを喜び、私たちを支援してくれている。私たちの世代だけでなく、子どもたちも介して何らかの交流を現地と続けたい」と話している。
【写真】㊤「北針の碑」の前で行われた天神丸100周年の記念式㊦ポイントアリーナの人たちと記念写真に納まる矢野ジョージさん(左)と菊池ヘンリーさん(右)